
Route 66、100周年。いまこそクルマで「本当のアメリカ」へ
ブランド USA SVP & CCO クリス・ヘイウッド × Daytona編集長 陰山惣一
2026年、アメリカは大きな節目の年を迎えている。
アメリカ建国250周年。そして、アメリカのロードカルチャーを象徴する「Route 66」の開通100周年だ。
シカゴからサンタモニカまで、8つの州を結ぶRoute 66。かつてアメリカ西部を目指す人々が走り、ロードサイドにはモーテルやダイナー、ガソリンスタンド、ネオンサインが生まれた。

それは単なる一本の道路ではない。
クルマに乗り、知らない街へ向かい、ローカルの人々と出会う——。Route 66には、Daytonaが長年追い続けてきた「自由なアメリカ」の姿が凝縮されている。
そこで今回、アメリカ合衆国の公式観光促進団体「ブランド USA」でシニア・バイスプレジデント(広報・コミュニケーション担当)兼 最高コミュニケーション責任者を務めるクリス・ヘイウッド氏に、Daytona編集長・陰山惣一がインタビューした。
Route 66からRoute 65、カリフォルニアのRoute 1、そして再び注目を集めるデトロイトまで。
いまアメリカを旅するなら、どこを目指すべきなのか?
クルマ好きの視点から聞いてみた。
「自由な道」を走る。それこそがRoute 66の魅力
陰山 2026年はRoute 66の100周年であり、アメリカ建国250周年でもあります。観光という意味でも、かなり盛り上がっているのでしょうか?
クリス そうですね。今年はアメリカにとって非常に特別な、まさにマイルストーンとなる年です。
建国250周年は7月4日の独立記念日を中心にしながらも、年間を通してアメリカの歴史やストーリーを祝うものになっています。そしてDaytonaの読者にとって、より興味深いのはRoute 66の100周年でしょう。
Route 66は、アメリカに対するノスタルジーを思い起こさせてくれます。
そして何より、オープンロードを走ることの楽しさがあります。
クルマで自由に道を走る。そこには「自由」と「可能性」があるんです。

今回の100周年は、Route 66そのものを祝うだけではなく、実際にクルマに乗って旅に出てもらい、少し変わった場所や、これまで知らなかったアメリカを発見してもらう絶好の機会だと思っています。
そこにあるのは、いわば「Authentic USA」。本物のアメリカです。
Route 66は「アメリカのノスタルジア」を感じさせると同時に、オープンロードを走る自由と可能性を体験できるものだとクリス氏は語る。
Route 66は“おじさんのための道”じゃない
陰山 アメリカ人自身もRoute 66を旅行するんですか? なんとなく上の世代に人気があるイメージがありますが、若い人たちも走るのでしょうか?
クリス 私は「すべての世代のためのもの」だと思っています。
もちろん、上の世代のほうがRoute 66をよく知っているかもしれません。でも若い世代にとっても、これはすごく魅力的な体験になると思います。
最近、旅行者からよく聞くのが「スマートフォンの電源を切りたい」ということなんです。
スマホをオフにして、大切な人や家族と一緒にクルマに乗る。そしてロードトリップに出る。

人と人がもう一度つながる方法として、ロードトリップほど素晴らしいものはないと思います。
陰山 なるほど。スマホを置いて、クルマで旅をする。むしろ今の若い人にとって新鮮なのかもしれませんね。
クリス氏が強調するのは、Route 66が単なる懐古趣味ではないということ。
デジタルから少し距離を置き、大切な人と同じ景色を見ながら移動する。
100年前に誕生した道が、デジタル時代だからこそ新しい意味を持ち始めているのだ。
シカゴからサンタモニカまで全部走らなくてもいい
Route 66というと、「シカゴからサンタモニカまで走破しなければ」と考えてしまう。
しかしクリス氏によれば、そんな必要はまったくない。
クリス 8つの州をすべて走らなくてもいいんです。
Route 66沿いでは100周年に合わせて、さまざまなフェスティバルやイベント、ミュージアムなどを楽しむことができます。
Route 66をひとつの大きな“器”のように考えて、その中から自分の好きなものを選べばいい。
もっと広く考えるなら、Route 66だけではなく「Great American Road Trip」を楽しんでほしいですね。
アメリカでは、どこへ行ってもロードトリップができます。
大都市だけではなく、小さな町を訪れ、少し変わったホテルに泊まり、ネオンサインを眺め、ローカルの人たちと話す。
それこそが、アメリカを体験するユニークな方法だと思います。
標高約2100m。Flagstaffでクラシックカーを見る
Route 66の100周年に合わせ、沿線ではさまざまなイベントが開催される。
クリス氏がそのひとつとして挙げたのが、アリゾナ州Flagstaffで開催される「Mother Road Classic」だ。

クリス FlagstaffのシティホールとWheeler Park周辺で開催され、ヴィンテージ・アメリカンカーの展示やパレードが行われます。
Flagstaffは標高約7000フィート(約2100メートル)に位置していて、Route 66沿線では最も標高の高い都市です。
松林でも知られていますし、世界初の「International Dark Sky City」としても知られています。
さらに北へ約80マイル(約130km)走れば、グランドキャニオンがあります。
つまりRoute 66とグランドキャニオンを組み合わせた旅もできるわけだ。
Route 66を一本の線として考えるのではなく、そこから寄り道していく。
これこそロードトリップの醍醐味だろう。
Route 66の「ど真ん中」にあるMidpoint Cafe
ここでクリス氏から、陰山編集長へ突然のクイズ。
クリス Route 66のちょうど中間地点がどこにあるか知っていますか?
陰山 いや、全然わからないなあ(笑)。
クリス テキサス州にあるMidpoint Cafeです。
Route 66の正確な中間地点にある、クラシックなロードサイドスポットです。ここではMother Roadの中心にある、昔ながらのダイナーカルチャーとノスタルジーを感じることができます。

こういうカフェに立ち寄ったり、モーテルに泊まったり、地元の人たちと話したりする。
美しい景色や面白い建物ももちろん大切ですが、私が一番大事だと思っているのは、そこで暮らすアメリカ人と出会い、会話をすることです。
旅から帰るとき、単に「景色がきれいだった」だけではなく、その土地の人たちとのつながりを持ち帰る。
それによって旅はもっと豊かなものになると思います。
陰山 そこ、ちょっと行ってみたいですね。
Route 66の魅力を語るクリス氏の言葉の中で、何度も登場したのが「local」という言葉だった。
有名観光地を見るだけではない。
地元の人と話す。
ダイナーで食べる。
モーテルに泊まる。
その何気ない体験こそが、“Authentic USA”なのだ。
Route 66だけじゃない。次に走るなら「Route 65」
陰山 Route 66以外で、日本人旅行者におすすめしたいドライブルートはありますか?
クリス まずカリフォルニア沿岸のRoute 1ですね。
Big Sur周辺は土砂崩れなどによる道路へのダメージで閉鎖されていた部分もありましたが、再び走れるようになっています。
そしてもうひとつおすすめしたいのが、Route 65です。
陰山 Route 65? それはちょっと面白いですね。「66じゃなくて65って何?」って思いますから(笑)。
Route 65はアメリカを南北方向に走るルート。
クリス氏によれば、ルイジアナ、アーカンソー、ミズーリ、アイオワ、ミネソタなどを通り、Route 66とはまったく違うアメリカを見ることができる。
クリス 日本からの旅行者は、アメリカの主要なゲートウェイ都市についてはよく知っていると思います。
でも南部については、それほど知られていない。
だからRoute 65は、これまで知らなかったアメリカを発見する、とてもいい機会だと思います。
Route 66ほど有名ではありません。
でも、だからこそ面白いんです。
Route 65のなかでも、クリス氏が特に「景色が素晴らしい」と話したのがアーカンソー州だった。

“アメリカすぎる店”Bass Pro Shopsへ行け!
Route 65沿いでクリス氏がもうひとつ挙げた場所が、ミズーリ州Springfieldにある「Bass Pro Shops」。
アウトドア用品やフィッシング用品を扱う巨大な店だ。
だが、海外から来た旅行者にとっては、単なるショップではないという。
クリス 海外から来た人たちが「こんな店、見たことがない!」と驚くんです。
アウトドア用品や釣り用品が大量に並んでいて、それ自体がものすごく“アメリカ的”なんですね。

こうした、普通の観光ルートから少し外れた場所が面白いんです。
海外から見れば、アメリカ人の日常そのものが観光コンテンツになる。
巨大なBass Pro Shopsもそう。
Walmartもそう。
ハイウェイ沿いの巨大ガソリンスタンド「Buc-ee’s」もそうだ。
クリス氏によれば、海外旅行者がBuc-ee’sを訪れ、巨大な給油施設やフード、きれいなトイレなどをSNSで紹介するケースも増えているという。
さらに、アメリカでは当たり前の「ソーダの無料リフィル」やランチドレッシングまで、外国人にとっては“アメリカでしか見られないもの”として面白がられている。
「アメリカらしさ」は、観光名所だけにあるわけではないのだ。
Daytona読者なら、この4本も走ってみたい
Route 66、Route 65以外にも、クリス氏はいくつかの道を教えてくれた。
カリフォルニアの海岸線を走るRoute 1。
コロラド州のMillion Dollar Highway。
ゴーストタウンとハイデザートを抜けていくネバダ州US 50、通称The Loneliest Road。
そしてモンタナ州Glacier National Parkを走り、大陸分水嶺を越える約50マイル(約80km)のGoing-to-the-Sun Road。
どれも「目的地へ早く到着するための道路」ではない。
走ること自体が目的になる道だ。
クルマ好きなら訪れたい、3つのミュージアム
アメリカの自動車文化を楽しむなら、ロードトリップと一緒にミュージアムも訪れたい。
クリス氏が特に挙げたのは3つ。
Daytpna本誌でもお馴染み、ロサンゼルスのPetersen Automotive Museum。
オクラホマ州Elk CityのNational Route 66 Museum。
そしてミシガン州DetroitのHenry Ford Museum of American Innovationだ。
Petersenでは自動車史やクラシックカーを、National Route 66 MuseumではMother Roadの歴史と文化を知ることができる。

Henry Ford Museumでは自動車産業だけではなく、アメリカそのものの歴史に触れられる。公民権運動の象徴となったローザ・パークスが乗っていたバスなども展示されているという。
そして、もう一度「Detroit」へ
陰山 以前IPWへ行ったとき、シカゴのブースの後ろにDetroitの大きなブースがあって、かなり積極的にプロモーションしていたのが印象に残っているんです。
Daytona編集部としては、モーターシティのDetroitは是非一度特集してみたいと思っています。
いまDetroitで何か新しい動きはあるんですか?
クリス Detroitはいま、まさにルネサンスの途中にある街です。
もちろん自動車文化がありますが、それだけではありません。
とてもスタイリッシュな街になってきていて、注目度も上がっています。

そして2028年6月には、IPWがDetroitで開催されます。
私自身、この業界に30年近くいますが、Detroitへ行ったことがないんです。だから私にとっても非常に楽しみですね。
かつて“Motor City”として世界の自動車産業を動かしたDetroit。
その街がいま、新しい姿へ変わりつつある。
Daytonaとしても、これはぜひ追いかけてみたい。
「Don’t overlook the USA」
インタビューの最後、陰山編集長はクリス氏にこう尋ねた。
陰山 最後に、Daytonaの読者へ何かメッセージをお願いします。
クリス氏の答えはシンプルだった。
クリス 「Don’t overlook the USA.」
アメリカを見逃さないでください。
アメリカには、クルマで旅をする素晴らしい体験が数え切れないほどあります。
誰もが知っているアイコニックな場所から、まだほとんど知られていないデスティネーションまで、ぜひアメリカへ来て体験してください。
ロードトリップをする場所として、アメリカは究極のデスティネーションです。
Route 66を走る。
ダイナーに入る。
知らない町のモーテルに泊まる。
Bass Pro Shopsに驚き、Buc-ee’sで休憩して、またクルマを走らせる。
もしかすると、そこで地元のおじさんと話が始まるかもしれない。
目的地へ到着することだけが旅ではない。
途中で何が起きるかわからないから面白い。
100周年を迎えたRoute 66がいま改めて教えてくれるのは、そんなロードトリップの原点なのかもしれない。
スマホの電源を切って、クルマに乗る。
そして、まだ知らないアメリカへ。

Route 66の100周年は、その旅を始めるには最高の理由になりそうだ。
Chris Heywood / クリス・ヘイウッド
Brand USA シニア・バイスプレジデント(広報・コミュニケーション担当)兼、最高コミュニケーション責任者(CCO)。Brand USAのグローバル広報、メディアリレーションズ、コミュニケーション戦略を統括し、世界14市場の海外オフィスネットワークを率いる。ニューヨーク市観光局、ロサンゼルス観光局でグローバルコミュニケーション責任者を歴任。2024年、HSMAI「Top 25 Extraordinary Minds」に選出。

ブランド USA
「アメリカ合衆国の公式観光促進団体。戦略的なマーケティング活動や旅行政策に関する情報発信を通じ、海外からの訪米旅行者誘致と米国経済・地域社会の発展に貢献している。
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