
「ドリフトは、世界で最も『手が届く』情熱だ」 マッド・マイクが語る、日本への愛と独自のフィロソフィー
2026年3月21日、横浜の巨大な物流倉庫が一夜にしてクレイジーな非日常空間へと変貌を遂げた「Red Bull Tokyo Drift 2026」。珠玉のカスタムカー約500台が集結し、トップドライバーたちが夢の共演を果たす中、ひときわ異彩を放つオーラで5,000人の観客のボルテージを最高潮に引き上げた男がいる。世界にその名を轟かせるドリフトレジェンド、「マッド・マイク」ことマイケル・ウィデットだ。
コンクリートの柱をスレスレでかすめ、鼓膜を揺らすロータリーサウンドとともに白煙を巻き上げる彼の走りは、単なるモータースポーツの枠を超え、もはや極上の「エンターテインメント」と言っていい。妥協なくビルドされた常識破りのモンスターマシンたちには、間違いなく彼自身の熱い魂が宿っている。
コンペティションの最前線で戦いながらも、常に「観客を魅せること」に執念を燃やす彼の原動力は一体どこから来るのか。Daytonaは今回、圧倒的なパフォーマンスで会場を制圧した直後のマッド・マイクに直撃インタビューを敢行。世界中を沸かせるカリスマの脳内と、クルマカルチャーに対する底知れぬ愛情に迫った。
世界的ドリフトアイコン、マッド・マイクことマイケル・ウィデット氏の紹介
- マッド・マイク(マイケル・ウィデット / Michael “Mad Mike” Whiddett)
- 生年月日・出身:1981年1月10日生まれ、ニュージーランド出身。
- 世界を熱狂させるドリフト界のカリスマ: レッドブル・アスリートとして世界で活躍するプロドリフトドライバー。元々はモトクロス競技で活躍し、当時からその常識破りなアグレッシブさで「マッド・マイク」の異名をとっていた。2006年頃からドリフト競技へと転向。「勝負」と同じくらい「観客を魅せること」に徹底的にこだわり、常に限界ギリギリの走りを追求している。
- 無類のロータリー愛とビルダー魂: マツダのロータリーエンジンをこよなく愛する。極限までチューニングされた「MADBUL(RX-7)」や「RADBUL(MX-5)」など、自ら「ブル(雄牛)」の名を冠した常識外れのモンスターマシンを次々とビルド。2018年には「Formula Drift Japan」でシリーズチャンピオンの栄冠にも輝いている。
■日本のドリフトシーンと若手ドライバーについての見解 自身のルーツと日本へのリスペクト
私にとって、日本はドリフトの原点であり、最初からインスピレーションを与えてくれた存在です。私は母子家庭で育ち、父の顔は知らず、車の整備は独学で、家族にモータースポーツ関係者は誰もいませんでした。
当時、ニュージーランドでストリートドリフトをしては何度も問題を起こしていたんです。そんな時、「オプション」のビデオで今村陽一、熊久保信重、野村謙といったオリジナルのドリフトドライバーたちの走りを見ました。

それを見て「ああ、これがスポーツになるんだ。これなら問題を起こさずに済む」と感銘を受けたんです。
■日本のスタイルとアグレッシブさについて
私が持ち込んだ古いマツダRX-3もそうですが、私の車づくりは常に日本のスタイル、例えば引っ張りタイヤなどに影響を受けています。日本のドライビングで一番好きなのは、今でも変わらない「アグレッシブさ」です。
ライバルたちの走りを見ていると鳥肌が立ちます。自分の走行を終えてグランドスタンドに立ち、彼らが走ってくるのを見ると「なんて最高なんだ」と心から思います。
あの感覚をグランドスタンドにいるたった一人にでも与えることができたら、それは私にとって最大のトロフィーですね。

■次世代のドライバーとドリフトの環境 若手ドライバーとシミュレーターの台頭
今の若手は、シミュレーターという大きな武器を持っています。シミュレーターのおかげで手足のコーディネーション(連携)を学べるので、非常に有利です。
ちなみに私の17歳の息子もニュージーランドのオフロードレースのチャンピオンですが、ドリフトもやっていて、ドリフトの技術をオフロードのジャンプに応用しています。
■日本のドリフト環境の素晴らしさ
日本はサーキットの数も信じられないほど多いですよね。プロの大会に向けて水曜日に鈴鹿ツインへテストに行くと、奥さんと一緒にAE86に乗っている男性がいたりして、彼らはそれを趣味として楽しんでいます。
プロレベルと同じように、趣味レベルのステージでもドリフトを心から楽しめる環境があるんです。
■ドリフトの始めやすさ
正直なところ、ドリフトはとても始めやすいモータースポーツです。私は子供たちに草の根レベルでゴーカートをやらせていましたが、ドリフトよりもお金がかかりました。
ゴーカートはコンマ何秒を争うので、隣のピットの人が新品タイヤを履いていると「うちの5歳の子供にも新品タイヤを…」「毎ヒート新品エンジンを積んでるぞ、どうやってついていけばいいんだ?」となってしまいます。

私はフリースタイルモトクロス(FMX)の出身ですが、FMXはタイムではなく、ジャッジやファンのためのものであり、私のバイクが5年落ちでも関係ありませんでした。ドリフトもそれと同じなんです。
■SNSの影響と日本での特別な体験 SNSの力と親しみやすさ
今はSNSがあるので、スマホでクレージーなバックワードエントリー(後ろ向き進入)などを撮影して投稿するだけで、何十万、何百万回も再生されます。
レッドブル・レーシングを見ても、私たちが関わった楽しいソーシャル企画の中で、ドリフト関連のコンテンツが最も視聴されています。
これは、ドリフトがみんなにとって「手が届く(親しみやすい)」ものであることを証明しています。
【映画の世界を現実に】週末のクレイジーな体験
この週末で一番クレイジーだったのは、昨夜『ワイルド・スピード』に登場したVeilSide(ヴェイルサイド)のRX-7を運転できたことですね。ただコースを流すだけだと思っていたら、なんとここのコースで実際にドリフトをさせてくれたんです。本当に最高でクレイジーな体験でした。
編集後記
コンクリートの柱スレスレを爆走し、誰よりもクレイジーなパフォーマンスで観客を熱狂させていたマッド・マイク。しかし、いざマシンから降りてインタビューに向かうと、その印象は良い意味で180度裏切られました。
とにかく笑顔が絶えず、めちゃくちゃフレンドリー!世界中を飛び回る誰もが知る大スターでありながら、少しも気取ったところがありません。まるで昔からのクルマ仲間に会ったかのように、気さくに、そして熱心に語りかけてくれる姿が非常に印象的でした。
そして何より心に残ったのは、彼の言葉の端々から溢れ出る深い「日本愛」です。日本のカーカルチャーやJDMに対する心からのリスペクトを持っており、話を聞いているこちらが嬉しくなってしまうほど。彼が駆る「魂の宿るマシーン」の裏側には、日本のファンとカルチャーへの底知れぬ愛情が詰まっているのだと確信した、最高にエキサイティングな取材でした。
(取材・文:ケンボー)





